はじめての森林サービス産業ー入門編ー

森林サービス産業ってなんだろう?

最近、森に関わる地域や団体からチラホラと聞くことが増えたこの言葉。
森林サービス産業とは一体なんだろう?

林野庁のサイトにはこのように記載してある。

森林サービス産業とは、山村の活性化に向けた「関係人口」の創出・拡大のため、
森林空間を健康、観光、教育等の多様な分野で活用する新たなサービス産業です。

なんとなく関わっている人にはわかるかもしれないが、全く初めての人は
森林空間てなんぞや?と思うことだろう。
ここで言う森林空間とは、森林を木材の価値として見るだけでなく、森林そのものの価値、
木々が生えている、森林そのものの“場”や“空間”の価値を表している。

(その背景には、これまで日本の森林は、木材利用のために木が植えられてきた
という歴史があるから)

今、地方自治体や山林所有者、民間企業らが、この森林空間を活用して
新たな産業を生み出そうと試みている。
わたしが長年取り組んでいる“森林浴”もまさに森林サービス産業の一つ。
森林そのものの魅力を、健康や教育、癒し、レジャーに使わせていただいている。

森林浴の様子

ここからは、これから森林サービス産業に取り組む方向けに役立つことを伝えていこうと思う。

はじめての森林サービス産業 

まず、これまで森林・林業に携わる方は、総務省の日本標準職業分類項目名で
自分たちの職業の区分は、農林漁業従事者を選択していただろう。
しかし、森林サービス産業を仕事とする団体の多くは、この職業区分は、
サービス業
を選択することとなる。

サービス業と聞くと、何を思い浮かべるだろうか?
飲食や宿泊、観光、レジャー、リラクセーションなど世の中にはいろいろなサービスがある。
これらの産業を思い浮かべるとわかるように、
サービス業とは、顧客に対するサービスが仕事になるということだ。

即ち、森林サービス産業は、
森林という空間をフィールドとして、サービスを提供する仕事ということだ。

ということは、ただ森を使って人を呼べは良いだけでなく、
顧客が対価を払うだけの価値あるサービスを生み出す必要がある。

対価は、森に対してだけではなく、サービスに対して払われるということ。

森林浴の仕事をしていると、「自分の山を解放したらお金をとっていいのか?」
と聞かれることがたまにあるが、ただ山を解放しただけでお金を取れるわけではない。

お金をいただけるだけの、価値あるサービスを提供することが必要だ。

現在の森林サービス産業では、健康増進や、アウトドア、森の幼稚園、マウンテンバイク
などが例に挙げられているが、サービス業はまだまだ無限にある。

狭い施設の中で行われているリハビリなども、もしかすると森の中でできる可能性だってある。
また、マッサージやカウンセリング、飲食、宿泊なども森の中で提供することだって
できるかもしれない。
想像してわかるように、これらのノウハウは専門の業界があるだけあって、
見様見真似でできるものではない。

行政の取り組みの多くは、他地域での先駆事例を探し、まずは真似て見る
ことでより良い活動を広げていくことが多いが
サービス業を例に見れば、誰もやっていないことを、真っ先にやってみることで
新たなサービスの価値が見出されやすいともいえるだろう。

ということは、森林業界は、新たな産業と連携し、互いに協力をすることで、
新しい産業が生み出せる可能性があるということだ。

森と未来では、森の中で企業研修を実施している。
しかし、これはわたし自身が元々企業研修を生業としていた経験があったためできていることだ。
森があるからと言って、誰でも森で企業研修を作れる話ではない。

得意なことを、得意な人と、森でやってみる。
それが森林サービスを生み出す秘訣のようだ。

森を使ったサービスをはじめる人が知っておくべきこと

森の中でマッサージができたら気持ち良いだろうな〜
森の中でコンサートができたら美しいだろうな〜

森の中でやってみたいことを想像してみると、いろいろな可能性が思い浮かぶ。
これを機に、様々な業界の方に森の可能性を知っていただきたい。
と同時に、森の利用を一緒に考えてみたい。

初めて森を活用する人に知っていただきたいことは、
いくら荒れてる山林でも、所有者が見当たらず放置されている山林でも
そこには土地の記憶があるということ。
放棄された土地、というよりも、使われなくなった神社
に近い感覚を持ってもらうと良いかもしれない。

長い間、人が入っていない神社がそこにあって、その空間を使っても良いとなったら、
まず何を調べるだろう?
どんな神様が祀ってあり、誰が管理をして、どんな歴史のある神社なんだろう。
そんなことを考えるのではないだろうか?

日本の森は、古くから神が宿ると考えられており、長く大切に扱われてきた場所だ。
鳥居があったり、巨木があったりすれば、その信仰を感じられるかもしれない。
森を使う時には、まずその森の歴史に思いを馳せ、先祖に失礼の無いよう
ありがたく使わせていただくということを忘れてはいけない。

また、森は施設とは違い、生き物であること
そこには、木々だけでなく目には見えなくても動物や植物が共に生き
さらに、スプーン一杯の森林土壌の中には約1億匹の微生物がいるということも
忘れてはならない。
まさに、これから世界が地球と共に生きていくための姿勢こそが、
森林サービス産業には必要なのだ。

さぁ、あなたも一緒に、森と無限の可能性に挑んでは見ませんか?